陶磁器

日本六古窯(にほんろっこよう)

投稿日:2019年2月16日 更新日:

日本六古窯(にほんろっこよう)

日本六古窯とは日本に古くからある陶磁器窯の中でも、中世から現在まで生産が続く6つの窯、
「瀬戸、越前、常滑、信楽、丹波、備前」
のことです。朝鮮半島や中国からの渡来人から伝わった技術により開始され、近世からの窯とは区別されています。

2017年4月28日◆日本六古窯が日本遺産に認定されました

越前焼の越前町・信楽焼の滋賀県甲賀市・備前焼の岡山県備前市・丹波焼の兵庫県篠山市・瀬戸焼の愛知県瀬戸市・常滑焼の愛知県常滑市(6市町)が、六古窯の窯跡や陶芸技術、景観などを「きっと恋する六古窯-日本生まれ日本育ちのやきもの産地-」として文化庁に申請し、日本遺産に認定されました。

日本生まれ日本育ち!
中世からやきものづくりが続く生粋のやきもの産地は、様々な窯跡や工房へ続く細い坂道が迷路のように入り組んでいます。
煙突の煙を目印に塀沿いに進めば、古き良き時代から乱世を越えてきた焼き物独特の世界へ誘い込まれ、美しい日本の原風景が感じられる神秘的な雰囲気に包まれます。

日本六古窯

瀬戸焼(せとやき)愛知県瀬戸市

愛知県瀬戸市と、周辺で生産される陶磁器です。東日本で流通し「瀬戸物」は陶磁器を指す一般名詞化しました。

特に近世以後のものを「瀬戸焼」、鎌倉~室町時代の窯芸と製品を「古瀬戸」と呼んで区別しています。
平安時代初期頃から無釉の杯や小皿などが焼かれ、後には灰釉の壺類が作られました。

鎌倉時代には初代加藤四郎左衛門景正 (藤四郎) が中国宋代の陶法を伝えたといわれ、飴釉の瓶子、仏花器、壺、皿などが作られました。
室町時代には天目釉の使用が始まり、茶壺や茶入れなどが大量に生産されました。
桃山時代には瀬戸黒、黄瀬戸、織部焼などの茶陶が盛んとなり、成形法もろくろ引きのほか型作り法が考案されて、食器、酒器、装飾具など製品の種類と量が増加しました。

江戸時代後期、文化4(1807)年に加藤民吉が有田で染付磁器の製法を学んで帰り以後磁器の生産が主となりました。
瀬戸は唐津と並んで二大製陶地であり、現在焼物は近畿以東では「瀬戸物」、中国地方以西では「唐津物」とも呼ばれます。

常滑焼(とこなめやき)愛知県常滑市

愛知県常滑市と、周辺を含む知多半島内で焼かれる炻器(せっき)。12世紀末から続く焼き物です。

常滑焼は鉄分を多く含む土や、ベニガラ(酸化鉄)を発色させて作られる赤い色の陶器で、特に無釉で焼き締めた赤い色をした朱泥(しゅでい)急須が有名です。

常滑焼の陶祖である鯉江方寿(こいえ ほうじゅ)が中国の急須作りを学び、その製法を広めました。酸化鉄を多く含んだ朱泥急須は外観が赤いという特徴に加え、お茶を美味しく飲める秘密があります。常滑焼の急須でお茶を淹れると、急須に含まれる酸化鉄とお茶に含まれるタンニンが反応し、お茶の苦みがとれてまろやかになります。

常滑焼はその他、工業用のタイルや土管、洗面器や便器、植木鉢といった建築製品、生活用品も多く作られ、釉薬をつけた多彩な陶器も数多く生産されています。

越前焼(福井県丹生郡越前町)

越前焼(えちぜんやき)は福井県丹生郡越前町の一部で焼かれる陶磁器(炻器)です。釉薬(ゆうやく)を使用せず、高温で焼成されるときに薪の灰が器に流れ出して溶け込む自然釉の風合いが好まれています。

平安時代末期から始まったとされている越前焼は「織田焼」と呼ばれていましたが、第二次世界大戦後に日本六古窯のひとつに挙げられた際に越前焼と名付けられました。当初から壺や甕(かめ)、すり鉢といった台所用品が作られ、茶器などの焼き物が流行った江戸時代にも方向性を変えずに雑器を焼き続けていました。明治には衰退して一時は廃絶の危機に追い込まれましたが、1970年に越前陶芸村がつくられ、観光客が多く訪れるようになりました。

近代的な作品も増えましたが、古くからの焼き締めが多く、1986年に通商産業省(現経済産業省)から伝統工芸品の指定を受けています。

信楽焼(滋賀県甲賀市)

狸の置物で有名な信楽焼(しがらきやき)は滋賀県甲賀市信楽を中心に作られる炻器です。訪れてみると狸の置物だけではなく、多種多様のバラエティーに富んだ信楽焼を見ることができます。

信楽は付近の丘陵から良質の陶土がでる土地柄で、信楽の土は耐火性・可塑性に優れ、腰が強く「大物づくり」に適していながら、「小物づくり」においても細工しやすい粘性を持っています。

長い歴史の中で伝統的な技術によって伝えられ、信楽特有の土味を活かした登窯(のぼりがま)、窖窯(あながま)の焼成により得られる温かみのある火色の発色と、自然釉によるビードロ釉、焦げの味わいが特徴です。土と炎が織りなす芸術として親しまれています。

丹波立杭焼(兵庫県篠山市今田町立杭)

平安時代から続くと言われている丹波立杭焼(たんばたちくいやき)は兵庫県篠山市今田地区付近で焼かれる陶器で、「丹波焼」または「立杭焼」とも呼ばれます。

中世の丹波焼は、赤っぽい土肌にかかる焼き締めによる自然釉を特徴とし、備前焼や信楽焼に比べて若緑色のおとなしい風合いでした。江戸時代以後は釉薬や技法が多様になり、現代の丹波焼でも江戸時代からの特徴を引き継いだ民芸調の作品が多く見られます。

備前焼(岡山県備前市伊部)

備前焼(びぜんやき)は岡山県備前市周辺を産地とする炻器です。備前市伊部地区で盛んであることから「伊部焼(いんべやき)」とも呼ばれており、この地区では備前焼の窯である煉瓦造りの四角い煙突がよく見られます。

釉薬を使わず「酸化焔焼成」によって堅く締められた赤みの強さや、「窯変(ようへん)」によってつくられる自然な模様が特徴です。主に茶器、酒器、皿などが生産されており、「使い込むほどに味が出る」飽きがこない良さがあります。

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