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「和硯」「唐硯」代表的な硯の種類

投稿日:2019年3月1日 更新日:

代表的な硯の種類

硯には「和硯」と「唐硯」がございます。どちらも代表的なもの、有名なもの、価値のあるものは高値で取引されることがあります。

代表的な和硯

日本での硯の材料産地は、
「山口県宇部市の赤間石
「宮城県石巻市の雄勝石
「三重県熊野市の那智黒石
「山梨県早川町雨畑の玄晶石(粘板岩)
などがあります。

特に「赤間石」と「雄勝石」は百年以上の歴史があり、国の伝統工芸品指定も受けていますが、雄勝石は2011年3月の東日本大震災で石巻市の旧雄勝町地域が大きな損害を受けたことにより生産が停止しており、現在、入手が困難になっています。

代表的な唐硯

端渓硯(たんけいけん)

中国南部、広東省高要県の南東にある爛柯 (らんか) 山に沿った渓谷で採取される硯石で作った硯のことです。深山幽谷と形容される美しいこの場所で、端渓硯の紫色を基調にした美しい原石が掘り出されます。漢の時代に「端渓県」が設けられたことから「端渓硯」と呼ばれます。

端渓の石が硯に使用されるようになったのは、唐高祖の武徳年間 (618~626) からとされていますが、宋代には既に下巌・中巌・上巌・竜巌など多くの種類がつくられ、日本にも渡ってきたとされています。

石の中の淡緑色の斑点など丸みを帯び中に芯円を持つものを「眼」(がん)といい、石眼は一種の含鉄質結核体(酸化鉄などの鉄の化合物が磁気を帯びて集まり形成されたもの)であることが証明されています。
このような模様も大変珍重され、端渓の石は細かい彫刻にも向き、様々な意匠の彫刻を施した硯が多く見られます。

端渓硯は「磨墨液が持つ撥墨の範囲の広さ・佳さ」に定評があり、「見た目の美しさ(「眼」などの石紋の現れ方、)」「彫刻の精巧さ」「色合い」「模様」などに価値を見出されています。

美術、芸術面からの価値が大変高く、骨董品となると、高値で取引されています。

端渓硯のランク

端渓硯は採掘される坑(こう-地に掘った穴)によってランクがあります。

  • 【老坑(ろうこう)】
    最高級の硯材とされ、この一定の範囲から産出する硯材は「水巌(すいがん)」と呼ばれます。近くを流れる河「西江」より深く、最深部は約180メートルの深さに及んでいます。
  • 【坑仔巌(こうしがん)】
    老坑の南西に位置しており老坑に似た素材です。紅紫色を基調とし、墨おりは非常に良くきめ細かい石質で、小さめの硯が多く見られます。老坑端渓硯に比べて石が乾いていて、石声が金属音に近い音を出します。
  • 【麻仔坑(ましこう)】
    肇慶市の北に位置した場所にあります。深紫色をしており、かつては老坑に匹敵するという評価もされていた美しい石です。
  • 【宋坑(そうこう)】
    宋坑は一つの坑ではなく、一帯にあるいくつかの坑の総称で、宋代に開抗されたことから名付けられたとされています。宋坑の佳石は肌理が細かく墨の下りがはやく、端渓水一帯で採れる三大名坑に次いで品質の良い硯石とされています。
  • 【梅花坑(ばいかこう)】
    色合いに趣があるものの、硯材としては下級とされています。それでも50万円以上で売買されることがあります。
  • 【緑石坑((りょくせきこう))】
    現在取れる硯材の評価は低く、価値も低いとされています。

歙州硯(きゅうじゅうけん)

歙州硯は端渓硯とともに名硯とされ、夜空の星々のような金色の石紋が美しい硯で、端渓の艶やかさに比べて重厚で蒼(あお)みを帯びた強い黒色をしています。
原石は南京の南200kmの歙県から掘り出され、比重は重く石質は硬く、たたくと端渓よりも高い金属のような音がします。へき開(割れ方がある特定方向に割れやすい性質)のために、繊細な彫刻には向きません。

磨り味は滑らかな端渓とは異なり、鋭い感覚で墨色も真っ黒になります。歙州硯はうす絹を2枚重ねた波のような模様「羅紋」(らもん)が特徴です。

洮河緑石硯(とうがりょくせきけん)

北宋中期甘粛省洮県の洮河の深底から採石されました。端渓硯を超える名硯とされますが、河の氾濫により採石場所が不明となり、短期間で途絶えました。わずかに現存する硯は非常に貴重なものであり、入手はほぼ不可能と言われています。

現在販売されている端渓緑石や新洮河緑石などは、洮河緑石硯とは全く別の物です。

澄泥硯(ちょうでいけん)

澄泥硯能力製法については現代でも解明されていない部分があり、石を原料とする「自然石」説と、泥を焼成する「焼成硯」説があります。うるおいを含んだ素朴さのある硯であり、石硯とはまた別のものとも言われています。

澄泥硯は
「鱔魚黄澄泥(せんぎょこうちょうでい)」…ベージュ・くすんだ黄色)
が最もランクが高く、次いで
「緑豆砂澄泥(りょくとうしゃちょうでい)」…緑色・黒または青まじり
がよく知られています。

澄泥硯の代表種のひとつ「蝦頭紅(かとうこう)」と呼ばれているものは、名前の通り「茹でるか焼いた時の海老の頭の渋い赤色」と表されます。それぞれに硯としての品質差があり、見る人によって品質の良し悪しも違います

松花江緑石硯(しょうかこうりょくせきけん)

吉林省松花江上流域で採掘される「緑・黄色系のしま状模様」が特徴の硯です。
満洲によって「清」が建国された際、近辺を調査した結果、吉林省で良い硯石の山地が発見されました。これが松花江緑石であり、清の時代の名品が多く存在しています。

紅糸石硯(こうしせきけん)

紅糸石硯は黄褐色に紅色の糸状の模様が特徴です。山東省青州の黒山にて発見されましたが、宋代に良質の原石が枯渇したため衰退し、現存するものは希少です。
そのため、紅糸石硯として安価で販売されているものは全く違うものや、偽物の可能性が高いと言われています。

陶硯(とうけん)

陶磁器で作られた硯です。磁器のものは磁硯と呼ばれます。出土品などからも発見されるため、制作が始まった歴史は古いと考えられています。実用的には石硯ほどの優位性はありませんが、彩色や形状などの意匠の価値が認められ、観賞用として、またコレクターに高値で取引されることもあります。
尚、磁器で作られた磁硯と呼ばれるものもあります。

みなさまが大切にされてきた硯箱を高価買取しております。
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