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釜(かま)の基礎知識

投稿日:2018年2月22日 更新日:

「釜を懸ける」

釜 骨董品 買取 栄匠堂釜が茶会において大変重要な茶道具であることは、幕末の大老井伊直弼の『茶湯一会集(ちゃのゆいちえしゅう)』の中で「此釜一口にて一会の位も定まるほどのこと」と言い表されていることからも伺えます。

茶会を催すことを「釜を懸ける」といい、茶会が催されているときは「在釜(ざいふ)」という言葉が寺社の境内などに掲げられ、「いまお釜を炉にかけていますから、みなさんお越しくださいね」という意味を伝えています。

釜の生産地

釜の主たる生産地はおおよそ四か所「芦屋」「天命(天明/天描)」「京都/京釜」「関東」に分かれます。

芦屋釜

筑前国葦屋津(現・福岡県遠賀郡芦屋町)で鋳造された茶湯釜の総称で、鋳造・製作技術ともに最高位とされています。

この地名は奈良時代からすでに鉄の鋳造地として知られていました。
はじまりは不明ですが、遺品は鎌倉時代のものがあり、その多くは仏教関係諸品でした。南北朝時代から室町時代にかけて周防国山口(現・山口県)を本拠地とした守護大名の大内氏により盛んに作られたとされます。

室町時代晩期頃から桃山時代を頂点に活躍し、江戸時代前期には大半は姿を消しています。芦屋そのものは寛永年間(1624-44)には終わりを告げました。

形の多くは真形釜(しんなり)で、霰と呼ばれる点の突起物がたくさんある文様があり、他には松竹梅や花鳥、山水など比較的伝統的な絵柄が多いです。また鐶付※は鬼面(きめん)か獅子咬(ししこう/尼面あまづら)になっています。
また、絹肌といわれる滑らかな釜肌に文様を施す特徴があります。

現在は芦屋系釜作地が数か所存在し、「脇芦屋」と分類されています。
脇芦屋は桃山時代から江戸時代前期にかけての好みの釜が多いですが、流行釜も製作しており、芦屋が真形中心だったのに比べ、制作の自由さが感じられます。

※鐶付(かんつき)-釜の持ち運び用のとっての部分、様々な種類の形があります

天命

下野国佐野庄天命(現・栃木県佐野市)で制作された茶湯釜のことを言います。

西の芦屋と並び称される東の代表的な釜作地です。
古くから点在していたとされますが、確実な史料はなく不明な点も多いです。

天命釜が茶の湯釜として認められるようになったのは、侘茶が炉を導入した時期からと推察されています。形は肩衝、二重肩、面取などの形状に線や糸目、竪筋を入れた特徴がります。また耳は鉦鼓耳(しょうこみみ)、鐶付は鬼面や獅子咬(尼面)が多いです。

絹肌の芦屋釜に対し、天命は文様のあるものが少なく、やや荒れた釜肌が日本の美意識とされるわび茶の嗜好に合うとされています。
桃山時代以前のものを古天命、以後のものを天命と呼ばれています。

京釜

室町時代末期から京都三条釜座(かまんざ)で制作された釜の総称を言います。

京都御所の少し西に京都府庁があり、その正門から南に延びる「釜座通」があります。三条まで通じており、このあたりに釜を製作する人の同業組合のような「釜座」があったため「釜座通」と呼ばれたと伝えられています。この場所は古くから金属に関わる事業が行われていたとされています。

織田信長が上洛し、三条釜座がその営業権を認められて以来、釜座には鋳物師が軒を連ねて繁栄しました。当時京都ではこの場所以外で鋳物をすることは禁じられており、材料の購入や販売などは独自の組織で編成され行われていたとされています。三条釜座は、戦国時代の楽市・楽座の経済政策で他の座が解体されても、難を逃れています。

それは、茶湯釜をはじめとする鋳造技術や、釣鐘などの宗教的なもの、鉄砲や大砲などの武器製作にも変えることができたことが一因とされています。このような時代背景のある京釜ですが、京都の出土遺跡では13-14世紀頃と推定されるものも発見されています。

施されている文様は細かく精巧で、芦屋釜の文様にも通じるものがあります。その為三条釜座ができる以前から京都のいたるところで鋳造製作が行われていたと考えられます。

釜師には西村道仁、名越善正、与次郎などが室町・桃山時代に活躍し、釜の他にも様々な鋳物を製作、仏教諸道具も製作していたようです。他に大西家(千家十職)、堀家、下間家などがいます。

関東釜

江戸時代に入ってから関東で生産されたものを「関東作釜」といい、江戸名越家、江戸大西家、山城家茶、堀家の湯釜が有名です。

裏千家四代・仙叟宗室(せんそう そうしつ)の指導を得て釜を造り始めた宮﨑寒雉(みやざき かんち)家は、北陸の金沢で独自の様式を生み出し、現在まで伝えています。

季節

茶の湯の世界では一年を炉の季節に分けます。
炉と風炉では用いる道具に様々な違いがあり、厳密な規範はない釜ですが、大ぶりの釜は炉の時季に、小ぶりのものは風炉の時季に使われています。

また、鎖や自在(茶の湯釜を炉に吊るための道具)で釣釜にしたり、季節に応じて炉・風炉ともに透木の扱いなども違い、釜の設え(しつらえ)によって、季節の暑さや寒さを和らげる雰囲気をつくりだしています。

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