お茶席で使用する棚
棚には大きく分けてふたつの種類があります。「点前座に置く」形式の棚と、茶室に付設された「仕付棚」と呼ばれるものです。
点前座に置く棚
点前座に置かれる棚は、台子から派生して出来たものとされ、横幅が台子に近い大きさのものを大棚、半分くらいの小さなものを小棚といいます。大棚も小棚も四畳半以上の茶席で用いられます。
【大棚】
大棚には、地袋に引き違いの襖(ふすま)がはめられた武野紹鷗(たけのじょうおう)棚や、倹飩(けんどん)(※1)の地袋をもつ志野棚(利休袋棚)、地板のない寒雲棚(かんうんだな)や円融台(えんゆうだい)などがあります。
大棚はおおむね四本柱で、他に古田織部が好んだ弓箭棚(きゅうせんだな)、小堀遠州好みの重ね棚、片桐石州(かたぎりせきしゅう)好みの竹違い棚などがあります。
※1)倹飩(けんどん)…家具・建築物において、収納部の蓋・扉の開閉手段のひとつ。
【小棚】
小棚は有名な家元の好みも大変多く、さまざまな種類の材質や意匠などがあります。水指を最初から置いておく「置き棚」と、水指を運び出して点前を始める「運び棚」に大別され、地板の有無、柱の本数、中棚の数などにより点前上の規範が決められています。
利休の独創的な棚に「旅箪笥」と呼ばれるものがあり、元々は茶道具一式を入れて携帯したものが、茶席にも据えられるようになったといわれています。桐でつくられ、錠前の付いた倹飩の戸がはめられています。後には形はほぼ同じで、材質を杉に変えたものがつくられたり、春慶塗(しゅんけいぬり:漆塗の技法)で好まれたりもしました。
棚といえば、十一代玄々斎による「点茶盤」の創案も有名です。
明治5年(1872年)の春開催予定の京都博覧会で、外国からのお客様の訪問が想定されていたため、玄々斎は座礼によらない点茶法の考案を京都府から依頼されていました。
台子を二つ合わせた寸法の点茶盤と客席に喫架と円椅を配置し、前年の5月に発表しました。
現在では 椅子に腰をかけて行う茶道の点前形式(=立礼式)の棚はよく見られますが、当時は画期的な形式でした。
仕付棚
茶室に設置されている「仕付棚」は裏千家の宗家に多くの例が残されています。利休御祖堂(おんそどう)の蛤棚(はまぐりだな)、無色軒(むしきけん)の釘箱棚(くぎばこだな)、溜精軒(りゅうせいけん)の大釣棚(おおつりだな)などがあります。
京都府にある妙喜庵(みょうきあん)の国宝茶室「侍庵(たいあん)」では、次の間と勝手に、釣棚の例を見ることができます。
又隠(ゆういん)や今日庵(こんにちあん)(どちらも京都市にある裏千家茶室)にある洞庫も、慣例として仕付棚に含んでいます。
茶人好みの棚
千利休好みの
「山里棚(やまざとだな)」
円能斎(えんのうさい:茶道裏千家十三代家元)好みの
「吉野棚(よしのだな)」