「竹」の花入
竹の花入れは茶人の創作物です。
武野紹鴎(たけの じょうおう)、千利休(せん の りきゅう)などによって茶のわびさびが重んじられるようになってから、竹の花入れもそれにふさわしいものとして大切にされ、「かね」や「焼き物」と同じように広く用いられるようになりました。
竹は真竹の使用が多く細工物に適しています。竹節を利用したり歪みやしみなど竹花入の見所で、尺八のような「寸切」「一重切」「二重物」などといった姿形、個性の表現を愉しむことができます。
「竹」の花入の形
寸切系
- 尺八(しゃくはち)… 寸切(ずんぎり)ともいわれます。竹を筒切にして根の方を上にした逆竹で使用します。花窓などはなく、一節を下の方に残し、後方に釘孔を開けた形の花入。
- 御酒筒(みきづつ)… 神前に供える神酒筒を模写したもの。
- 送り筒(おくりづつ)… 切花を持ち運ぶためにつくられた携帯用の竹筒で、通い筒ともいわれ、寸胴に切った竹に提げ緒が付けられたものです。細長い手桶形のものが送り筒の本型とされる。
一重系
- 一重切(いちじゅうぎり)… 多くは根に近い部分を用いた二節以上の竹で、前面に窓がひとつ(横一文字に)深く切り取られている花入です。上端の輪に節を残すようにしてつくられています。
- 鮟鱇(あんこう)… 切り口の大きい様を魚の鮟鱇にたとえたもの。
- 獅子口(ししぐち)… 太く短い竹が使用され、窓が横一文字に大きく切られたもの。
- 円窓切(えんそうぎり)… 花を入れる窓が丸く切られたもの。
- 鷽切(うそきり)… 窓の上方を斜めに切った形状。窓の形は鶯(うぐいす)のくちばしに見立てたものとの説もあります。
- 歌花筒(うたはなづつ)… 細長い竹の下部に花を入れる窓を開け、上部は短冊をはさむために切り込みがあります。玄々斎が好んで野点席などに使用しました。
二重系
- 二重切(にじゅうぎり)… 筒形の竹花入の上下二段に花窓を開け、上端が輪になっているもの。
- 窓二重(まどにじゅう)… 上の窓は円窓、下の窓は横一文字に切ってある二重切の花入。
上の重が円窓になっているものだとか。 - 再来切(さいらいぎり)… 二重切の上部の輪と柱を切り捨てたもの。輪無二重切とも称されます。輪無二重切(わなしにじゅうきり)ともいうようです呼ばれています。
置筒系
- 置筒(おきづつ)… 釘穴がなく左右に柱を残して前後に窓を開けて吹貫(ふきぬき)にしたもの。置筒は床の間に置いて使用します。藤村庸軒の創始によるものと伝えられ、吹貫(ふきぬき)ともいわれます。
- 三徳(さんとく)… 置筒を小さくした形に三つの足で支えられます。掛・置・釣の三通りの使い方ができるためこの名前がついたと言われます。玄々斎が長男千代松(一如斎)が5歳のときに花生始記念として好んだもの。
- 稲塚(いなづか)… 太い竹の根を根節で切り、逆竹にして上部に花を活けます。稲束とも書き、姿が田の稲塚に似ています。表千家七代・如心斎が好んだと言われています。
舟系
- 沓舟(くつふね)… 神官などの履く沓に形が似ている釣舟型の竹花入。表千家六代・覚々斎好で、太鼓舟の軸先にあたる部分を斜めに切り落としたもの。
- 油差(あぶらさし)… 油を差す道具に似ています。
- 太鼓舟(たいこぶね)… 節と節の間が短い竹を用い、両端に節を残して切った花入。横から見ると太鼓のような形をしています。仙叟宗室好。
(※仙叟宗室(せんそうそうしつ)は千家4代目で、裏千家の初代家元となった茶人
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