陶磁器

美しく貴重な天目・黒釉

投稿日:2021年12月7日 更新日:

天目・黒釉

常滑窯 「天目(てんもく)」と呼ばれる”黒く発色”した鉄釉の器物。その釉を「天目釉」と呼ぶこともありますが、これらは宋代に福建省の建窯で焼かれた黒釉碗が元とされています。茶葉の産地だった中国浙江省の「天目山」一帯の仏寺で用いられた天目山産の茶道具を日本の僧が持ち帰り「天目茶碗」と呼ばれました。
「天目」という名称は器形に対しても使われ、高台が小さく腰がすぼまり口縁下が一段凹む建窯の碗の特徴を持つ碗は、釉に関係なく天目と呼ばれることがあり、美濃や瀬戸の白天目が例として挙げられます。

黒釉の歴史

建窯では盛んに焼造され、神技といわれる油滴・窯変が多数生産されました。中世の日本人もこれらを称賛し、数多の天目が日本に持ち込まれ、今日まで残っているものもあります。

天目茶碗は主に寺院で重用され、茶の世界でも「貴人の器」と称されて茶器の首位に据えられますが、黒釉の器は古来、東洋の多数の地で生産され、実用的な庶民の雑器として焼かれており、天目釉は両極性を備えながら、広く使用されてきました。

東晋時代には既に本格的な黒釉が造られています。黒釉陶は青磁や白磁と同様に、唐代で本格的に発展し宋代で絶頂に達しました。宋の天目と言えば、福建省の建窯、江西省の吉州窯の両窯が有名ですが、中国北部の諸窯でも優れたものが生産されました。河北省の定窯で焼かれた黒定(こくてい)、磁州窯系の河南天目・柿天目・黒釉掻落(かきおと)しなどが有名です。

中国以外では高麗、李朝の黒釉、日本の瀬戸天目に良品が多数生産されています。

天目釉(黒釉)の種類

天目釉には茶褐色、漆のような黒、釉面が平坦で光沢のあるもの、(ザラついて)光沢のないもの、油滴・窯変・禾目などの窯変を起こしたものなどがあり、多様な種類が生まれます。

天目釉の色は青や緑に発色する青磁と同じで、釉に含まれる鉄分が黒色または茶褐色に発色したものです。鉄は最も基本的な釉薬で、発色は主に釉中の鉄分の含有率によって変化します。
天目釉の発色の違いや窯変、釉調などの変化は、釉中での鉄分の固まり方とその量、釉表に浮かび出た酸化第二鉄の結晶の現われ方で変わります。

これら左右するのは、鉄分の含有量以外に、釉薬の粘り(長石類とその溶融剤である石灰・木灰の比率)、釉層の厚さ、釉中に微量に含まれる鉄以外の酸化金属(マンガンやクロムなど)、焼成(還元炎や酸化炎の出し方)、焼成後の冷え具合などが要因となります。

建窯の天目茶碗(建盞:けんさん)

建盞(けんさん)の黒は「しっとりとした艶のある落ち着いた黒色」をしており、釉層の厚さがこの表情を出しています。釉層を厚くすることで色を濃くする手法は、郊壇(こうだん)官窯や龍泉窯など、宋代の青磁の手法と同じです。現在では天目釉をより黒く発色させるために、釉薬に酸化鉄と酸化マンガンを混入し、徹底して還元炎で焼成する技術を得たために、釉層が薄いものでも漆黒の発色が可能となっています。

建盞の器形は、後世の茶碗の典型的なスタイルとなりました。盞成(さんなり)や天目形と呼ばれ、碗の口が開き底が締って、高台は低くて小さい形をしています。また口縁はくびれ、「すっぽん口」と言われます。胎土は鉄分を多く含み、碗の底部で露出している素地土は肌が荒くて堅く、色は濃い紫褐色です。

油滴天目

常滑窯「油滴天目」という名前は、釉面に散る斑文群が水に油の滴が浮いているように見えることから付けられました。
油滴天目には「銀の油滴」「金の油滴」と呼ばれる、結晶体が銀白色をしたものと、金色を帯びたものがあります。油滴の産地として建窯が有名ですが、河北省や河南省など、華北一帯でつくられた優品が生産されました。薪を燃料とする建窯のものは、還元炎焼成されて青味を帯びた黒地の釉面に、銀油滴のものが多く、一方、石炭を燃料とする華北の窯では、酸化炎焼成によって赤味がかった黒釉の地に金油滴が現われたものが多く発見されています。

禾目天目

禾目(のぎめ)天目は黒色または褐色の釉面に、縦縞の細い線が浮き出しており、稲穂に似ていることから禾目天目と呼ばれています。(兎の毛にも見えることから兎亳盞(とごうさん)とも呼ばれます。)
釉の表面に浮きだした鉄分が焼成中に流下し、冷めるにしたがって固まってできたものが線のように浮き出していると考えられており、建窯で最も多量に生産された代表的な作品です。

玳玻天目

玳玻(たいひ)天目は吉州窯でつくられたもので、天目釉の上から失透性の藁灰釉をふりかけ、黒地に黄色または飴色の斑文があります。その釉調が鼈甲(べっこう)に似ていることから鼈盞(べっさん)ともいわれます。
建盞とは異なり、型紙を使って様々な文様が人為的に施されています。素地はおおよそ灰白色です。

木の葉天目

木の葉天目は玳玻天目の一種で、実際に木の葉を天目釉の上に乗せて焼いています。木の葉に含まれる珪酸分が乳濁釉の役目をし、木の葉の姿がそのまま写し出されています。

曜変天目と油滴天目

「侘び茶」が盛んになる前の中世期には、中国の建窯で焼かれた天目(建盞)が多く輸入されていました。それらの中に、漆黒の釉面に光り輝く、目も眩むほど美しい景色をもつものがあり、ひときわ珍重されてきたのが「曜変」と「油滴」の天目です。
この曜変・油滴は宋から元の始めにかけて造られ、曜変天目においてはそれ以降は焼かれませんでした。

後世の陶工がその再現を試みたと思われる作品も残っています。例えば瀬戸天目の中には、釉が幾重にもかけられ、その釉面に赤い斑文状のものが現れたものがあります。これらは曜変または油滴の再現を目標に造られたと考えられています。

油滴天目の再現

油滴天目は明・清時代にも焼かれたことが分かっており、電気やガスの窯が普及してからはその焼成が盛んになりました。
日本で油滴を焼く作家として加藤幸兵衛、清水卯一、木村盛和が有名です。戦後、一貫して油滴を研究した木村盛和は、炎や温度の調整が自由に出来る窯で油滴が簡単に焼けるようになって以降、原料に着目し、精製されていない天然の原料を探して使うようになりました。

曜変天目の再現

黒い釉面に大小の結晶が浮かび、その周りに、暈天(うんてん)状(ぼかした虹彩)を持つものは曜変天目と呼ばれます。
天目釉の結晶は粘りの多い釉に出ますが、虹彩は粘りの少ない釉に現われるため、相反する条件を満たすことで生まれる曜変天目の生成のプロセスは未だ完全には解明されていません。世に現存するものは5作品または6作品とも言われていますが、結晶と暈天状の虹彩という曜変の条件を完全に満たしたものは4作品しかないとされ、宋代以後は全く焼かれていないと考えられており、いずれも建窯製で日本にあります。

作り方も全く解明されておらず、将来も恐らく再現は不可能と思われていました。しかし、昭和52年、奈良県生駒市の陶芸家・安藤堅がこれを再現しました。

物理化学の研究にたずさわっていた安藤堅は、50歳前に会社を辞めて陶芸家となりました。理詰めで曜変天目の再現をめざし、虹彩釉の研究から始め、試しに焼いたテスト・ピースを分析し、幾度も実験を繰り返しては成因の仮説をたて、これを完成させました。
しかし本人によると、物体としては曜変現象を実現させたがその成因を科学的に理論づけられてはおらず、まだ推論の域を出ていない。確かに斑文があり、その周りに虹彩があって、曜変天目の二つの条件を揃えたものではありますが、これが稲妻天目など、宋代のものの再現(全く同じもの)かという結論には至っていません。

中国 油滴天目 茶碗

中国 油滴天目 茶碗

中国 油滴天目 茶碗

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中国建窯 天目茶碗

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中国河南 天目茶碗

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韓国人間文化財 池順鐸 油滴 窯変天目

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吉左衛門黒天目 茶碗

楽 吉左衛門黒天目 茶碗

善五郎 天目茶碗

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吉左衛門 天目形 茶碗

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