掛軸には種類や用途があります
掛軸の代表的な種類には「祝儀掛け」「節句掛け」「花鳥画」「動物画」「山水画」「神仏画」など、季節感のある花鳥や植物、美しい自然、猛々しい獣や幻獣を描いたもの、これらを合わせた構図などがあります。気に入ったものを飾って楽しむことができますが、縁起物、魔除け、運気アップなど、願いを込めて飾る楽しみ方もあります。
ただし、仏事に祝掛けを飾ってしまうことは周囲を不愉快にするだけではなく、所作としても恥ずかしいことですので、どのような時にどのような図柄を選ぶべきかなど、基本的なことを知っておくと安心です。
風景画や美人画などの好きな柄を飾る楽しみ方もありますが、図柄や用途についての基本を知り、掛軸の飾り方を知っていると掛軸の魅力を引き出すことが出来て、楽しみ方も変わります。
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祝儀掛け
「松竹梅」「鶴亀」「旭日(きょくじつ)」「高砂(たかさご)」などは、おめでたいことをお祝いするときに掛けられる図柄です。祝儀掛けと呼ばれ、結納や結婚、お正月などのおめでたい日に飾る掛軸です。
例えば子供が生まれたときには、成長を祈願する意味で「鯉の滝登り」を飾るなど、祝いごとの内容、意味によってふさわしいものを飾ります。
節句掛け
「桃の節句」「端午の節句」などに飾られるのが節句掛けです。飾る時期が「節句」だけなので、図柄も節句の内容に合わせたものを飾ります。「桃の節句」には「雛人形」や「桃」など、女の子を祝うための柄を、また「端午の節句」には「兜」「虎」などを飾り、男の子の健やかな成長を願います。
花鳥画
元は中国から伝来しましたが、日本独自の進化によって日本らしい大和絵の手法を取り入れられた図柄がよく見られます。日本画としてもよく描かれる「花」や「鳥」の図柄は日常の様々な場面で飾ることが出来ます。
「木々と鳥」「花と蟲(むし)」「花と猫」も花鳥画として扱われ、季節に咲く花や見かける鳥を飾ると日常生活に季節を取り入れられ、お客様を迎えるときにも季節を感じてもらえる空間へと変わります。
このように季節ごとに掛け軸をかえることを楽しむ人もいれば、一方では季節にこだわらず、一つの自然画として飾る楽しみ方もあります。
中国の「四君子」という図柄には「竹や梅」「菊や蘭」「松竹梅」が描かれ、荘厳で美しい特徴を持っています。
また、四枚揃えて飾る「四季花鳥」では、四季折々の花と動物をあしらった図柄の掛け軸を4種揃えて飾ります。
四季花鳥には特別なルールはありませんが、気にいった同じような雰囲気の花鳥画を季節ごとに選びぶと、まとまって美しい空間を作り出します。
動物画
動物が描かれている掛軸では日本画でも描かれる「虎」や「龍」が、その迫力と力強さの象徴として人気があります。虎の鋭い眼光は魔よけの意味で使用されることがあります。龍は伝説上の生き物、神の使いや霊獣として扱われることもあり、龍を飾ると家に大きな力を呼び込むと考えられています。
そのため、動物がは魔除けやお守り、運気向上の願いをこめて飾られます。
また、縁起の良い「鯉」も好まれ、一般的には「選挙祝い」「昇進祝い」などの、「上昇」の意味を込めて掛けられることがあります。
山水画
山や川などの風景が描かれている「山水画」は、飾ってある場を落ち着いた空間にします。上品な図柄なものが多くどのような人にも好まれるため新築祝いとして送られたり、一年中掛けておく人もいます。
山水画や風景画の中でも特に好まれるのは、日本の象徴ともされる富士山が描かれたものです。外国の方にも人気のある神秘的な図柄は、幸運を招く縁起物として、また富士山の壮大さや美しさに感動して飾る方が多く、とても人気のある絵柄です。
富士山の画にも様々な種類があり、インパクトのある赤く染まった「赤富士」、日本ならではの季節感が印象深い「雪化粧の富士」など、富士山の彩によって空間の印象が変わります。
富士山は見る方角や構図も一定ではなく、湖が描かれていたり、山林から覗いていたりと様々な表情を見せます。
神仏画
「神事」で掛ける掛軸と、「仏事」などで掛ける掛軸を使い分けますが、両方で神仏画と呼ばれています。
天照皇大神(てんしょうこうたいじん)などの神道の掛け軸や七福神、天神(てんじん)様などの「神」を具現化して描かれた図柄を「神号」「神事画」として飾ることもあります。
「仏」や「菩薩」が描かれているのが「仏画」です。
仏画は美術品として飾られるだけではなく、「仏」をお祭りして家を守ってもらうという意味で飾られることがあります。他とは少し違うのは、「仏像」と同じ扱いをされることがあり、飾っておくだけでなく仏壇のようにお茶などをお供えすることもあります。そのため飾られる場所は慎重に選ぶことをおすすめします。
仏画やハスの花、書などの種類が描かれることが多い「仏事掛け」は法要や弔事、お盆やお彼岸などの仏事に飾られます。