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中世以来の窯・備前と丹波の比較と鑑定

投稿日:2021年10月8日 更新日:

備前焼

備前焼は中世以来続いた代表的な古窯で、よく、同じく中世から続く信楽・丹波・越前などと比較されます。備前焼の中心地、伊部(岡山県備前市)では、現在も300人以上の陶芸作家が、古くから伝わる伝統的な作陶法を大切にして精力的に生産活動を行っています。

備前は鎌倉/室町期の穴窯時代にはすでに、湿気を防いで熱効率を良くする半地上式の構造を持っていました。また、室町末期には粘性の強い田土を使用し、茶の世界においても優れた茶陶がいち早く登場しています。他の古窯よりも先進地とされつつも、江戸期以降は田土が釉薬に合わないこともあり、昔ながらの製法を守りぬいて、無釉焼き締めの陶器を生産し続けてきました。

備前の誕生と成長

平安末期までは須恵器も焼かれており、還元炎焼成による灰色のものが多くつくられましたが、鎌倉時代に熊山付近に窯が築かれると、完全な酸化炎焼成によって濃褐色に焼き締った「備前焼」が生まれ、壷(つぼ)、甕(かめ)、摺鉢(すりばち)の三種が主に焼かれました。

室町時代には山からおり、浦伊部地方に窯を開きましたが、室町中期の戦乱に翻弄され、品質の低下が目立ちます。この時期より茶陶の生産も始まりました。
室町末期は備前焼の変革期と言える時期です。共同大窯の築窯、田土の使用、ロクロ一本挽き成形法などが採用されます。桃山時代には器種も多様化し、備前特有の肌あいのものが焼かれ、茶陶の全盛期となりました。
江戸期以降は塗り土された「伊部手(いんべで)」が主流となり、主に置物・細工ものが生産されました。

丹波焼

丹波焼も備前と同様、中世から続く古窯の一つで、摂津国、播磨国と境を接する丹波国小野元荘に興ったとされ、窯跡が兵庫県多紀郡今田町周辺の山麓に散在します。
丹波古窯も他の古窯のように須恵器の流れを汲むとされる窯です。丹波焼の流れは「無釉の焼き締め陶が焼き続けられた中世~近世初期」「多彩な装飾技法を駆使した多様な施釉陶が主に焼成された慶長以降の登窯時代」とに分かれます。

穴窯時代(小野原時代とも)は平安末~鎌倉期~桃山時代に至るまでと長く、窯跡として、源兵衛山、太郎三郎、稲荷山、三本峠、床谷の諸窯が有名です。
登窯時代において、江戸中期(宝暦年間)までとそれ以降では、窯の中心地や作風が異なります。前期は重厚な飴釉、灰ダラ、赤い照りの出る赤ドベなどが多用され、器形も堂々としたものが多いのが特徴です。
後期には白い化粧土を実用的に用いた粉引調のものや、イッチン掛け、また鉄絵や赤絵など、技法は多彩になり、造形も薄づくりで洗練された印象を与えます。特に後期は傘徳利、浮き徳利、ローソク徳利などさまざまの技法による徳利が無数に焼かれました。
明治期には、有田や瀬戸産磁器の全国的な普及に押され、丹波陶は衰退してゆきましたが、昭和初期に柳宗悦などによって再評価され、現在も民芸作品などが生産されています。

備前焼の特色

備前焼では「土味」という言葉が用いられますが、この土こそが備前焼の最大の特徴です。鉄分を多く含んで粘着性に富み、成形しやすく、製品は茶褐色を呈し、適度な堅さをもち、割れにくい性質を持っています。
太平洋戦争末期に金属類が乏しくなり、軍部は備前焼の窯元に手榴弾の製造を依頼したというエピソードがあります。よく漉(こ)されて焼き締められた備前の土は、金属の代用となるほどの丈夫さを持っているからです。また、炻器質であることから、容器中の水を濾過して腐らせず水容器としても最適で、古くより備前甕は、水甕、藍染甕、酒や酢の醸造甕などとして全国で使用されています。

備前焼は無釉の焼き締めでありながら実用性大変高く、一方、ねっとりとして保湿性の高い土味は、他の地方の土からは得られないもので、茶碗、花生などの茶陶や置物として大変尊重され、その滑らかな土肌に、胡麻(ごま- 陶器の表面に降りかかる薪の灰が胡麻をかけた様な模様になったもの)・火襷(ひだすき)・伏せ焼などの窯変が、備前焼特有の景色を表し、美術工芸品としての評価も高いです。他の古窯のものと識別する際にも最初に土、次に造形を見ることから始まります。

備前焼の時代鑑別

備前焼の新古を判定する場合に最初に目安となるものは、土(焼成・土味)や器種と成形技術(器形)です。そして胡麻などの窯変、窯印・銘款の陶印が挙げられます。

一、平安末期~鎌倉初期

(1)薄作りで器形の種類が豊かな須恵器とは全く作風が異なり、厚手の壷などが焼かれ始めます。土味や底径の大きい造形など中世備前の特徴が表れはじめます。

(2)多くが須恵器と同じで還元炎で焼かれているため器肌の色は灰色系で赤味がありません。須恵器肌で中世風の造形を持っています。

(3)大壷は見られず中壷より小さいもので、頸部の立ち上りが低く、肩にヘラ彫りの沈線が二、三条回されています。後に造られる櫛目とは異なる一本線です。

二、鎌倉~室町中期(熊山窯・浦伊部窯)

(1)壷の口の立ち上がりはやや高い。摺鉢の溝は一本ずつヘラで彫られ、その本数は極めて少ない。

(2)土は山土なので小石を噛み、その粒子は荒くなっています。焼成は茶褐色で、窯変はあまりありません。

(3)胡麻釉は口から肩にかけて塗りつぶしたように多量にかかったものが多く、色はくすんだ緑青色をしています。

(4)陶印は殆どありません。

三、室町時代末期(山麓窯)

(1)壷は銅径に比して背の丈がかなり高く、甕は口造り(口端の折り曲げ)がガッシリとして厚く、三本の溝が彫られています。

(2)陶土は山土と田土が併用され、粒子は比較的細かく、その焼成は黒味がかった茶褐色をしています。重量は大変重く、窯変のあるものが少ないです。

(3)胡麻のかかったものは殆どありません。色はくすんだ青緑色ですが、やや黄味のかかったものが多いです。

四、桃山時代~江戸時代初期(大窯時代)

(1)壷は口造りが薄く、耳が三つまたは四つ付いたものが殆どで文様はありません。甕は肩の張りがなくなり、銅が太くなってきます。

(2)土はきめが細かく窯変に富んでいます。

(3)飛び胡麻が多く、色は黄色ですが時代が降りるにつれて色は濁ってきます。

(4)陶印は始めはてぼりであるが、次第に判で捺したものにかわってきます。

丹波焼の特色・他の古窯との比較

釉薬の無い焼き締め陶を生産してきた穴窯時代(中世~桃山期)の丹波は、備前や常滑などの他の古窯と比較して、技術的にも生産規模も後進地域と言えます。室町時代には素朴ながらも力強いフォームの肩から、丹波特有の鮮緑色の自然釉が繊細に降りかかり、しっかりと焼き締まった赤い地肌との対比が美しい作品を数多く生み出していました。轆轤(ろくろ)や轆轤技術が時代を経るにつれて進歩し洗練されてきましたが、技術的には創始期から穴窯廃窯まで目立った変革はありません。

装飾法では、例えば同じ中世窯の備前は直線文と波状文、信楽は桧垣文、常滑は三筋文と、それぞれの窯を代表する文様がありますが、丹波には施文された作品はあまり見られません。また、備前などは耳が付いた壷が多数生産されていますが、丹波にはあまりありません。あえて丹波の穴窯時代の装飾を挙げるとすれば、紐造りの跡を調整して平にする波直しの跡がついた「猫掻き(ねこかき)」と呼ばれるものでしょうか。

慶長年間に、他の古窯に遅れつつ登窯を導入し、生産主体を施釉陶に切りかえ、これまでにない多彩で独創的な釉薬と文様を生み出して特徴のある丹波焼を焼成しました。この慶長期を境に、大きな変革をしたことが丹波焼の最大の特色と言え、信楽や備前など他の古窯が、近世以降も純然たる焼き締め陶の窯であったことと比較されるところでもあります。例えば備前は、丹波とは対照的に、桃山期まで技術的にも生産規模も古窯の中では先進地域でしたが、以降はそれまでの伝統を堅持してきました。

丹波焼の鑑定

丹波焼は発掘調査の成果が得られにくいこともあり、古窯のなかでも鑑定が難しく、他の古窯のものと間違えられやすいといわれています。丹波を鑑定する際の第一の手掛かりは、「土味」と「器形」を見ることで、口造りと轆轤(ろくろ)技術が見分けのポイントとなります。

丹波焼の時代鑑別

  • 1.穴窯時代のものはすべて紐造りで、数段を継ぎ足ししてつくられている。
      口造りの部分は轆轤で仕上げられている。
  • 鎌倉~室町初期の口づくりは、無造作にひねり返した反り口。
  • 室町末期からは備前などにみられる玉縁(たまぶち)技法。室町中期は反り口と玉縁の中間の形。
  • 室町初期までのものは窯印が大きく、室町中期~桃山期にかけて徐々に小さくなっている。

備前と丹波 贋物の歴史

丹波焼と備前焼はさまざまな面で好対照をなしていますが、贋物においても同様です。丹波は贋物の歴史が浅く、例えば、現在存在する朝倉山椒壷は、江戸期の作品か昭和以降のものかのどちらかで、その中間はないといわれています。丹波焼の贋物は、柳宗悦などの影響により丹波焼が広く世間から注目された昭和14、15年以降に出現しました。

以降、朝倉山椒壷をはじめ、傘徳利、海老絵徳利など江戸期の徳利類の贋作や、最近では室町期の自然釉の壷などの写しも作られています。
悪意のものではない伝統手法を受け継いだだけの作品もありますが、人から人へ渡る流通段階で古陶にされてしまうこともあります。真作に比べて出来栄えが鈍く汚れた感じのものが多くあります。丹波のやきものは種類が豊富なため、ひとつひとつの真作の特徴をしっかりと理解、記憶して、比較しながら判定します。

備前の贋物は丹波とは対照的に古い時代まで遡ります。「伊部」は桃山時代から現在まで、絶えることのない日本有数の茶陶生産地ですが、そのためか、贋物の製造は江戸時代から絶えず続いてきました。明らかに江戸期の作である1151年(仁平元年)銘の掛花生が博物館にも陳列されたことがあり、また、明治中頃の名工の中にも、古物紛いのものを焼いて大阪に売り捌いていたとも伝わっています。

贋物の大半は絵付で判別できると言われますが、備前焼には絵も釉薬もありません。土だけで鑑定することになり、磁器や施釉陶とはまた違った視点が必要となります。
撫でてみてさらりとしないものは注意です。本体は雑につくられ、表面はニスなどで丁寧に作り込まれています。その場合は熱い湯に浸したり擦るなどすると、化けの皮が剝れます。アルコールで拭くとさらに顕著です。ひだやへこんだところが黒いものも注意で、多くが新しい贋作です。逆に古いものには汚れがほとんど無い傾向にあります。

炻器(せっき)

焼きものを分類すると、「土器」「陶器」「炻器」「磁器」の4つに大別できます。原料や焼成の違いにより分別されるmので、炻器は気候性がなく、素地は不透明で有色、容器内の水がしみない特徴があります。また、指ではじいた音は金属的な冴えがあり、刃物でも傷がつきません。これらの性質は白色半透明の磁器と共通しています。
対して陶器は、有色不透明で音は鈍く、傷がつき易く、容器内の水はややしみます。
万古焼、益子焼、備前焼などにも炻器の焼き物があります。

備前 森 陶岳 造 寒風大窯 花壷

備前 森 陶岳 造 壷

備前 金重 陶陽 造 双耳 花入

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古備前 鶴首 徳利

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備前 伊部 金重素山 造 耳 徳利

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備前 金重 陶陽 造 摺鉢 片口皿

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人間国宝 藤原 啓 造 備前 茶入

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古丹波 灰釉 四耳壺

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古丹波 茶入 象牙蓋 裏千家

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白丹波 白磁 種壷 水指

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丹波 市野 信水 造 大海茶入 象牙蓋

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古丹波 面取 花入 飾壷

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古丹波 耳付 大飾壷

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