花瓶とは
花瓶(かびん)は切花を生ける容器で、花器とも呼ばれます。置物が一般的ですが、壁に掛けて使うもの、吊るして使うものなどもあります。花篭と一体になっている花瓶もあり、一体となっているものや、分離しているもの(内側に花瓶をいれるもの)があります。
花瓶にはガラス製、陶磁器製、金属製、木製等の種類があり、大きさも様々です。
花瓶の魅力
花瓶は花を生けるための器ですが、形、大きさ、模様、デザイン、色などの種類も豊富で、花瓶に挿す花によって自由に選べるのが魅力です。また、材質も陶器だけでなく、ガラス、金属、竹などがあり、空間の雰囲気を演出するインテリアとしても活用できるアイテムです。
様々な素材の中でも一般的に陶器製の花瓶に人気があります。
花瓶は華道や茶道の世界で古くから重要な道具として大切にされてきました。特に、繊細な彫刻が施されていたり、鮮やかで美しく絵付けされた陶器の花瓶は華やかさがあり、見る人の心も晴れやかにします。
陶器の花瓶は時代ごとの窯の焼き入れ手法によっても個性が表れ、それぞれの地域の歴史を感じられます。骨董品コレクターにとっても大変価値のある花瓶が多く残されています。
陶磁器の花瓶
栄匠堂では李朝系(白磁、染付など)、中国系(色絵など)、国焼では備前焼、九谷焼、薩摩焼などのお取り扱いが多いです。その他、さまざまな花瓶を買取しております。
花瓶(陶磁器製)について
陶器製の花瓶は唐物(からもの―高麗物(こうらいもの))、国焼(くにやき)、京焼(きょうやき)、御庭焼(おにわやき)、楽焼(らくやき)に分けられます。
一方磁器の花瓶は石もので、銅器を模して創られたものが多く、形状も銅器の花入を受け継いでいます。
青磁の花瓶
磁器の中で青磁という青色をしたやきものがありますが、その青磁の中でも砧青磁(きぬたせいじ)という名の青磁があり、日本では収蔵数や種類も多いことで知られています。
青磁は中国北宋・南宋時代の官窯の青磁の花入から始まり、特に日本では名品が伝えられています。
その後青磁で有名な龍泉窯で焼成された青磁(砧青磁)と続いていきます。
日本では当初主に武家や禅宗の僧侶らの間で用いられていたとされ、茶の湯の登場後は古銅と同様に珍重されました。
古田織部の掛花入
古田織部は千利休が発展させた竹筒花入とは別の方向に向いていたようで、やきものの掛花入を用いていました。備前焼や唐津焼、伊賀焼などを積極的に用いた結果、16-17世紀(桃山時代後期~江戸初期あたり)にかけて掛花入が大流行します。
茶の湯において彼が君臨していた時代は、竹よりやきものの花入に名品が多く遺されているのも、彼の指導力の成果なのかもしれません。
しかしやきものの花入は江戸時代になると徐々に衰退していきます。
掛花入に付属する鉄の鐶が取り外され、その開いた穴は漆などで塗り固められ、一部は細水指に仕立て直されたりしました。
現在一般的な畳の上に置かれている花入(置花入)はそんな背景からきています。
花瓶の歴史
日本
仏教と深く関わりのある日本では、仏教儀式において花瓶が重要な役割を担っていました。花瓶、香炉、燭台は三具足(三種類の仏具)として、仏様の供養のために欠かせませんでした。仏具として使用されていた花瓶は、首や胴に紐飾りが施されたものが目立ちます。
浄土真宗においては「けびょう(華瓶、花鋲)」と称しされた一対で使用する小型の仏具を指します。仏教の諸宗派では茶碗や湯のみで水を供えますが、浄土真宗では、水を貴重なものとするインド仏教の作法に従い、華瓶を用いて水を供えます。
日本の茶道では、「花入(花入れ:はないれ)」と呼び、茶室や茶席を華やかにする意味合いで花瓶が用いられます。茶席で用意される花瓶は、茶室の雰囲気に即し、竹を切っただけのものや、素焼きの花瓶、こぢんまりしたもの、ほっそりとしたものなど様々です。本来は別の用途で使うような器物を「見立て」として使うなどするのも吉とされ、茶席で用いられる花は「茶花」(ちゃばな)と呼ばれています。
朝鮮
李氏朝鮮時代、最盛期を迎えていた白磁や青磁の花器が流行でした。高麗青磁の名品は日本でも高く評価されていましたが、技術の継承などが滞り、徐々に衰退しました。その後、白磁に控えめな花鳥の色絵をつける様式へと流行が移りました。
ヨーロパ
古代ギリシア人は花瓶に風景を描き、それらは当時の生活を描いた貴重な情報として大切にされています。
東洋の磁器の熱心な収集家として有名な、ザクセン選帝侯フリードリヒ・アウグスト1世は、景徳鎮や有田で作られた花瓶を大切にしていました。「選帝侯は、プロイセン王所有の青磁花瓶を入手するため、自国兵士600人との交換を申し出た。」という逸話もあるほどです。選帝侯の収集物はドレスデンのツヴィンガー宮殿に保管されています。
骨董品としての花瓶
日本では古くから床の間に掛け軸や花が飾られ、花と花瓶のバランスも観賞の対象として評価されてきました。また、花の美しさを引き立てる実用品的な花瓶は、それ自体を美術品として取り扱われることがあります。中国や日本、ヨーロッパ等で生産されてきた花瓶の中には、長年受け継がれてきた骨董品と称される花瓶に価値を見出す人もいます。コレクターの中で売買されるのはどのような花瓶でしょうか。
歴史的にも有名な作家、工房で生産されたもの
美しいブルーの花瓶を見たことがあるでしょうか?中国史上のある点において作られた青磁は、独特の透き通ったブルーをしており、その美しさと歴史的価値において評価されています。日本では、九谷焼、有田焼、備前焼のような有名な工房で作られたものや独自の意匠を残す作家(酒田柿右衛門 等)の作品が人気です。海外では文化や芸術から見たそれぞれの時代における代表的な作家の作品(例:アールヌーヴォー エミール・ガレ)や工房(青磁窯:越州余姚窯、洪州窯、吉州窯)等の作品が高値で売買されています。
有名・人気があるものは高い価値がつき、数十万売買されることがあります。
古くても良品であるもの(割れ・ヒビ・カケ等がない)
どんなに古いものでも破損していると大きく価格は下がります。骨董花瓶の評価のひとつには、実用的であることも挙げられます。破損状態がひどい場合は買取価格が付かないこともあるため、査定に出されるときは今以上に傷まないように大切に保管してください。有名な作家や工房でつくられたものであれば、破損していても大変な価値が付くことがありますが、ヒビやカケ等の破損を見つけても自分で修理せず、そのまま査定に出してください。
作品の付属品も全て残っている
例えば箱や鑑定書、人から人に渡った経緯が書かれた書類等の付属品が揃っている場合は一緒に査定に出してください。焼物の場合、桐等で作られた共箱に入っていることもありますが、箱にも価値があります。箱としての機能が無くなるほど古くても、廃棄や新しい箱に入れ替えることはせず、現在の状態を保ってください。