彫刻とは、本来石・木・粘土・象牙・金属などを掘り刻む行為あるいはその作品のことを指します。しかし彫刻の長い歴史を経て徐々に彫刻の定義が広くなり、現代では素材を使い三次元の空間に立体作品を造形する芸術作品のことを指すようになりました。例えば絵画が平面の二次元空間での芸術作品であるならば、彫刻は立体の三次元空間での芸術作品であるということになります。
現在日本では粘土などで作り上げる「塑造」や木材を使用する「木彫」から、西洋美術でよく目にする「ブロンズ像」に至るまで、立体的な造形物ならそれらは全て「彫刻」と呼ばれています。それ故、一言に彫刻と言っても様々な種類の彫刻が存在するのです。
代表的なものとして「ブロンズ像」「木彫」「象牙彫」などがあります。まずは誰もが必ずどこかで1度は見たことがあるであろう「ブロンズ像」についてご紹介します。
「ブロンズ像」とはブロンズで作られた像のことを指します。ブロンズとは銅や錫(すず)などを合わせて作った合金のことで、青銅とも呼ばれます。ブロンズ像は日本を含めた世界中で、遥か昔から作られてきました。ブロンズは表面が薄い酸化皮膜で守られる性質を持ち、この性質で内部の劣化を防ぐという特徴があります。この事はブロンズ像が作られ始めた頃から既に知られており、この性質のおかげで大昔に造られたブロンズ像が現在もきれいな状態で保たれているのです。あの『考える人』もブロンズ像です。
現在の日本でも至るところにブロンズ像は存在します。渋谷駅前の待ち合わせのメッカとして知られる『忠犬ハチ公像』や上野恩賜公園の『西郷隆盛像』も実はブロンズ像なのです。また、鎌倉の大仏は中世以前に建立された最大のブロンズ像と言われています。骨董品屋での価格の決め方として、ブロンズはもともと劣化の少ない性質のものなので保存状態よりも歴史的価値や作品・作者の人気度を重要視する傾向があります。
「木彫」も日本の骨董・彫刻界の中で外せないものの1つになります。木彫とは木材を使用して彫った作品のことで、仏像や置物などが有名です。価格の決め方としてはブロンズや象牙、石など他の彫刻素材に比べ長期間の保存が難しいので、保存状態の良し悪しを重要視する傾向があります。
「象牙彫」は象やマンモスの牙を使用して彫った作品のことで、色がとても美しく品があり、耐久性が非常に高いのが特徴です。また、現在象牙の輸入が禁止されていることから象牙彫も貴重な物となり、価格も高騰してきています。