千利休の時代から茶人は自分の好みの茶道具を用いてきました。
利休好、宗旦好など・・形や作風など自分好みのものを職人に作らせ、その作品を誰々の好みと言うようになったのです。
茶道具の一種である棚物は、大別すると台子(だいす)、大棚、小棚、仕付棚、箪笥(たんす)があります。
千家好みのものは特に小棚に多くみられます。
その中でも三友棚(さんゆうだな)は三千家が好んだ棚です。
明治の初めに大徳寺の和尚が三千家の融和の為、大徳寺境内の松と竹で作らせた棚で、地板、天板、それらの板を支える2本の竹の柱をそれぞれの千家が好み製作しました。
三千家以外でも千利休や千宗旦の好みも多くあります。
千利休 好 | 真台子、及台子、竹台子、志野棚、葭棚、冠台、四方棚、角棚、丸卓、烏帽子棚、山里棚、三重棚、旅箪笥、一重釣棚、二重釣棚など |
---|---|
千宗旦 好 | 桑台子、爪紅台子、一閑及台子、一閑高麗台子、一閑高麗卓、一閑丸卓、一閑三重棚、水屋洞庫、置洞庫、炮烙棚など |
表千家 | 『四代 逢源斎好』:四方棚・三木町棚 『六代 覚々斎好』:矢筈棚・桐三木町棚・桐三重棚 『七代 如心斎好』:桑小卓・桑三重棚 など 『八代 啐啄斎好』:溜塗丸卓 など 『九代 了々斎好』:料紙棚 など 『十代 吸江斎好』:溜二重棚・抱清棚・桐小卓 『十一代 碌々斎代好』:三友棚・方円棚・木屋町棚・木地旅箪笥・杉抱清棚 『十二代 惺斎好』:青漆爪紅四方棚・好文棚・桐糸巻透二重棚・青漆爪紅高麗卓・溜糸目高麗卓・青漆爪紅丸卓・松木摺漆丸卓・松の木台子・桐台子・桐春慶旅箪笥・春慶小卓・柳小卓・松摺漆四方棚 『十三代 即中斎好』:小袋棚・糸目紹鴎棚・台目棚・扇棚・扇面棚・八景棚・好日棚・旅卓・鱗透二重棚・鱗鶴透二重棚・鱗棚・小四方棚(溜爪紅四方棚)・蓬莱卓・溜塗江岑棚 『十四代 而妙斎好』:黒真塗四方棚・溜爪紅四方棚・壺々透二重棚・溜煤竹扇面棚 |
裏千家 | 『四代 仙叟好』:桑小卓・蛤棚・釘箱棚 『八代 一燈好』:桐及台子・高麗台子・銀杏台子(鴨脚台子)・老松台子・高麗卓・焼桐棚 『十代 認得斎好』:夕顔台子・桑四本柱行台子 『十一代 玄々斎好』:寒雲棚・円融台・更好棚・五行棚・杉棚・杉旅箪笥 『十二代 又玅斎好』:春慶竹台子・四方卓・三友棚・香狭間棚 『十三代 圓能斎好』:老松台子・五行台子・花月棚・寒雲卓・圓能卓・糸巻卓・猿臂棚・温古棚・源氏棚・吉野棚・巴棚・壺々棚 など 『十四代 淡々斎好』:飛騨春慶台子・秋泉棚・加寿美棚(霞棚)・豊祥棚・千歳棚・徒然棚・蛤卓・お壺棚・円叔棚・旭棚・知足棚・寿棚・菊寿棚・瓢棚・八千代棚・七宝棚・円意棚・折据棚・方円卓・渚棚・荒磯棚・誰ヶ袖棚・丹頂棚・尚歌棚・大内棚・溜精棚・御幸棚・独楽棚・遠山棚・清和棚・御園棚(立礼)・春慶紅葉張旅箪笥 『十五代 鵬雲斎好』:若松蒔絵黒台子・山雲棚・行雲棚・銀杏棚・竹寿棚・七宝卓・寿扇棚・三和棚・桑扇棚・玉椿七宝棚・知新棚(立礼)・四方瓢棚・平悠棚 『十六代 坐忘斎好』:富貴棚・雲鶴棚・平生棚・佳辰棚・吟楓棚 |
武者小路千家 | 『七代 直斎好』:矢筈棚・小袋棚・蛤棚・梅棚(旅箪笥)・妙喜庵卓・竹柱四方棚・香狭間棚・釘箱棚 『八代 一啜斎好』:自在棚・梅棚・烏帽子棚・壷々棚・二重棚 『十一代 一指斎好』:桐自在棚・萬寿棚・清友棚・三友棚 『十二代 愈好斎好』:澤潟棚・末広棚・梅棚・木瓜棚・蛤棚・杉烏帽子棚・白漆矢筈棚 『十三代 有隣斎好』:七宝棚 『十四代 不徹斎好』:起風棚・嶺雲棚・青漆爪紅澤潟棚・青漆爪紅矢筈棚 |
水指は、茶席の際の点前で釜に水を足し温度を整えることや、茶のついた茶碗や茶筅などを清める為の水を入れておく道具です。
当初は唐物の舶載品で皆具の一つとして用いられていましたが、茶の湯が興った室町時代から姿を見せ、古銅や木地の曲(まげ)や釣瓶、手桶の水指から漆塗を施し美を意識するようになり、備前焼や伊賀焼、瀬戸焼などのやきものへと創作の幅を広げ、矢筈口水指や一重口水指などの形状にも変化が見られるようになりました。
材質の種類は金属製、陶磁器、木製、竹製があり、陶磁器は最も多く用いられており、やきものの種類も多種に及びます。
唐物では、青磁や染付、色絵など。和物では備前焼や伊賀焼、唐津焼、京焼などがあり、焼締めや釉薬のかかったもの、色絵が施されているものなど技法も様々です。
木製は木地のものや漆塗を施したものがあり、手桶や釣瓶として古くより用いられています。
利休所持は南蛮胴張形、瀬戸捻貫(ねじぬき)、一重口など。利休好では、木地釣瓶、木地曲、真塗手桶、古銅釣瓶など。
少庵好では三島四方。
宗旦好では手付、鐘楼、不識、縄簾、芋頭、みたらし、矢筈口など。
風炉は席中の際に火をおこし、湯を沸かす為に用いられる道具です。
種類は唐銅風炉(からかねふろ)・鉄風炉・土風炉(どぶろ)・板風炉(木製)があります。
種類により真・行・草という位分けがあり、真は土風炉、行は唐銅風炉、草は鉄風炉・板風炉・丸炉(がんろ)と陶磁器製とされています。
利休好(初期)では利休面取風炉など。
千道安好では道安風炉。
武野紹鷗好では紹鴎風炉。
抹茶を点てる際に用いる道具です。
起源は中国、後に日本に伝来してきました。
素材は通常白竹で、各流儀により材種、穂の数や長さが異なります。
表千家は油竹(煤竹)、裏千家は白竹、武者小路千家は紫竹(黒竹)が用いられています。
茶道具を取り扱うときに用いられる布。
材質は基本的に絹で、紫色の塩瀬や友禅染などがあります。濃茶の際に茶碗に添えて出す出し帛紗では名物裂を用います。また煎茶道では木綿のものが使われることもあります。
帛紗の大きさは各流儀により異なり、表千家、武者小路千家では小帛紗は使わず、裏千家では出し帛紗の際に古帛紗を用います。
煙草盆は火入や灰吹、煙管などの喫煙具を納めておく道具として用いられます。
今日では実用化されていませんが、茶席の場の雰囲気を高める役割などに活用されています。
形状は大別して手付きと手無しのもの、唐物と和物に分けられます。角・長角・丸・小判形・木瓜形・舟形・行李蓋(こうりぶた)・鞍形・櫛形などがあります。
煙草が日本に伝来したのが16世紀末頃、17世紀頃には流行していたとされ、茶席では千宗旦好みの煙草盆から確認されており、その時代から登場したと考えられています。
大名好みや茶人好みが多いことでも知られ、大名好みは細工物、茶人好みは桐や桑などの木地で簡単な形状のものです。
薬缶は、水次/水注に区分されており、他に片口があります。
材質は金属製からなり、唐銅(からかね)・素銅(すあか)・毛織(モール)などがあります。
注ぎ口と上手(うわて)があり、蓋が付いています。
利休好は腰より下が黒い腰黒薬缶。
流儀によって好みがあり、表千家は口蓋無しの腰黒薬缶、裏千家は口蓋付の腰黒薬缶、武者小路千家は口蓋無しのひしぎ薬缶になります。